: 1

ソアラ : おっすっすー。久しぶりっすー。

アイリス : いらっしゃい、ソアラちゃん。

キャトラ : アストラ島でも、会ったばっかだし久しぶりってこともないけどね。

ソアラ : なにを言ってるんですか。一日千秋の思いで生きてたら昨日だって遠い過去。老化待ったなしっすよ。

キャトラ : 別にそんな風に生きてないわよ。

アイリス : 私はちょっとわかるかも……

ソアラ : アストラ島といえば、今回は激熱だったっすね。あっちいバトルてんこ盛りでした。

アイリス : ソアラちゃんもすっごく頑張ってくれたもんね。

ソアラ : いや、皆さんこそお見事でした。後世に残る頑張りというか……

キャトラ : たしかにそうね。あれだけ頑張ったんだしもっといろんなひとにみんなの活躍を知ってもらってもよかったわ。

ソアラ : ふむ……だとしたら舞台化するってのはどうっすか?

アイリス : 舞台化?

ソアラ : 今回起こったありのままをお芝居にするんですよ。それなら参加できなかった人にもバトルの温度感が伝えられるっす。

キャトラ : なんだか面白そうね!主役は誰になるの?

ソアラ : ま、誰でもいいんですけど……キャトラさんどうですかね?

キャトラ : え!? アタシ?

ソアラ : なんだかんだ、キャトラさんがいなかったらもっと早いうちに終わりを迎えてたと思うんで。

キャトラ : ソアラ……アンタ、わかってるじゃない。

ソアラ : 当たり前っす。これでもしがない勇者ですから。

キャトラ : それで? どんな内容にするの?

ソアラ : そうっすね……今回のハイライトといえば……

イェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!

ってところっすかね。

キャトラ : なんなのよ!

ソアラ : あ、申し訳ないっす。先に音量注意って言うべきでした。

キャトラ : そこじゃないわ!ハイライトが叫び声ってなによ!?

ソアラ : お気に召さないっすか?一体感があっていいシーンだと思ったんすけど。

ま、たしかに今回はダグラスさんの名シーンの数々は外せないですからそこもチョイスすべきでした。

だとしたら、あたし的には……『全方向に一マスずつ動けるぜ!』ですかね。

キャトラ : はあ? それってもしかして、みんなで王様ゲームしたときの?

ソアラ : その通りっす!

キャトラ : なんでそんなとこ切り取るのよ!

ソアラ : 物事はなにげないところにこそ重要さが隠されてるもんっす。

だからそこにフォーカスを当てまくって、真実を暴くドキュメンタリーにするんです。

キャトラ : 意味がわからないわ!

じゃあ、アタシを主役にするのはなんでなのよ!アタシがいなかったら終わりを迎えてたとかなんとか!

ソアラ : ……あれは本当に感謝感激っす。

古今東西ゲームのときキャトラさんがあたしのあとに『カニカマ!』と続かなかったらって思うとゾッとしますぞ。

キャトラ : なによそれ……結局全部ゲームの話なの!?それをもう一度演じろって言うの?

ソアラ : いやー。あっちいバトル満載の楽しい舞台になりそうですね。

キャトラ : そんな座組、方向性の違いでいますぐ解散よ!

 : 2

ソアラ : やっぱ、ぷかってると気持ちいいっすねー。

ベズトリフェニル : (そういうものですか?)

ソアラ : そうっすよー。ベズトっさんはいつもぷかっててわかんないかもっすけど。

ベズトリフェニル : (私の場合は別にぷかってるわけではありませんよ)

キャトラ : あら、ソアラとベズトっさんじゃない。

アイリス : こんにちわ、二人とも。なに話してたの?

ソアラ : いやー。飛行島が前みたいにぷかぷか浮いてて気持ちいいんですよ。

こういうのがチルってやつなんですかねー。だとしたら、ここはチルの楽園っすねー。

ベズトリフェニル : (彼女が妙なことを言っているのは毎度のことですが……)

(私も安心しましたよ。飛行島がもとに戻って。バロンさんも快復したようですし)

アイリス : そうですね。本当によかったです。

ベズトリフェニル : (飛行島が浮いてないときは気持ちが浮ついてしまいましたし)

ソアラ : お、なんか上手いこと言いました?

ベズトリフェニル : (……っ!ね、狙って言ったわけじゃありませんよ!)

(それより何故、飛行島の機能は低下したのでしょうね)

アイリス : たしかにそれが気になっているんです。

ソアラ : そんなの答えは簡単っす。

ベズトっさんもずっとぷかってるんじゃなくて羽根を休めて眠るときだってあるじゃないですか?

飛行島もそれと同じってことっすよ。

ベズトリフェニル : (それはどうですかね……それに私の場合ぷかってるわけでは……)

ソアラ : ただ、実は、ベズトっさんと飛行島には大きな違いがあるっす。

ベズトリフェニル : (それはそうです。鳥と島なんですから)

ソアラ : そう! 飛行島が休んでるときは、眠ってるのか起きてるのかわかりにくいんすよ!

ベズトリフェニル : (は……?)

ソアラ : だから、適度に声をかけてあげる必要があるんですよ。

『ねえねえ、まだ起きてる?』『飛行島の好きな人って誰なの?』『ほーら、教えなさいよー』ってな感じで。

キャトラ : なんなのよ!その修学旅行みたいなノリは!

ソアラ : でも、大事だと思うんすよねー。そういうの。

飛行島は絶対、アイリスさんたちのこと好きだと思うんで。

ま、今日のところは、そんなの気にせず、ぷかってチルりましょー。

アイリス : うん……そうだね……

キャトラ : たしかに……たまにはそんなときがあってもいいかもね。

ベズトリフェニル : (まあ……仮住まいの場所としては最適ではありますしね)

 : 3

ソアラ : ……ほえー。

アイリス : どうしたの、ソアラちゃん?

ソアラ : あ、アイリスさん。空を見てたんですよ。改めて見るとやっぱ高いですねー。

キャトラ : 当たり前じゃない。でも、気になるわよね、[ア:・][レ:・]。

アイリス : そうだね……

キャトラ : なんなのかしら、もうひとつの世界って。

アイリス : この間までは新しい魔物や大きな構造体が降って来たりしてたけどいまは落ち着いてるみたいだし……

キャトラ : これ以上攻めてこないってことはもう打ち止めってことかしら?

ソアラ : それなら、しばらくは安心ってことですか?

キャトラ : だといいけどね。

ソアラ : ……いや! 違うっすねこれは!

逆にそういう考え方をさせてゆるゆるになったとこをグサーッと刺してくるんすよ!

いやはや、あたしとしたことが騙されるとこでした。

犯人が捕まったと安心したとこに激ヤバな真犯人登場!というミステリーあるあるですよ、これ!

キャトラ : いつからミステリーの話になったのよ!

アイリス : ミステリーかどうかはわからないけど気を緩ませたらダメってことだよね。

ソアラ : そういうことです!

キャトラ : ま、当然よね。

ソアラ : ……ただ、どうしてもワクワクもしちゃうんですよね。

新しいボードゲームを手に入れたとき帰り道に箱開けて説明書読み出しちゃうみたいな。

そういうワクワクっす。

キャトラ : まあ、わからなくもないけど……

ソアラ : そうっすよね。悪いことだけが待ってるわけじゃないかもしれないですもんね。

アイリス : たしかにそうかもしれないけど……

なにがあっても大丈夫なようにみんな、気持ちだけはしっかり持っておこう。

ソアラ : はい!この勇者ソアラにお任せあれです!

 : 4

キャトラ : やっほー、ソアラ。

ソアラ : ウィーン。こんにちわ、キャトラさん。

アイリスさんもご機嫌麗しゅう。ウィーン。

アイリス : う、うるわしゅう。

キャトラ : どうしたのよ、ソアラ。なんかいつもと違くない?

ソアラ : おおっ!そこに気付いてしまいましたか!さすがはお目が高い!

キャトラ : だってアンタ、いっつも変だけど、よりいっそう変だったもの。

ソアラ : ほほう……さーて、どこが違ったでしょうね?……あっ! ウィーン。

キャトラ : それよ、それ!その取って付けたようなウィーンっていうのはなんなの!?

ソアラ : ふっふっふっ……実はっすね。あたし、ロボになったんです!

キャトラ : ま、まさかそんな……!

なんて言うとでも思った?つまらない冗談はよしなさい。

ソアラ : 冗談でも、嬢ちゃんでもないです。ちゃんと自分で頼み込んでこうなったんですから。

キャトラ : よくわかんないけど、一応付き合ってあげるわ。どうしてロボなんかになったのよ。

ソアラ : よくぞ聞いてくれました!あたし、この前から夜と昼しか寝ずに考えてみたんですよ。

キャトラ : この際、一日中寝てるのは置いとくわ。

ソアラ : 飛行島やベズトっさんだって、休みが必要なくらいですからあたしみたいなただの人間はそりゃ、グースカ寝ちゃいます。

アイリス : 睡眠は大切だしね。

ソアラ : でも、空からいつ何が降って来るかわかりません。だから、ロボになったんですよ。

キャトラ : だからの意味がわからないわ。

ソアラ : ロボになればいつ[何時:なんどき]でも出動できるワーカホリック勇者になれるっす。

アイリス : ソアラちゃん……いろいろ考えてくれたんだね。

キャトラ : でも、結局人間のままではあるんでしょ?

ソアラ : そんなことはありません。どっからどう見ても立派な——

キャトラ : だって、忘れてるじゃない。ウィーンって言うの。

ソアラ : あれ?そうでしたっけ?

でも、カティアさんにロボにしてもらったのは本当っすから!

キャトラ : カティアに?

ソアラ : そうっす。この前の戦いでのロボダグラスさんだってすごかったっすからね。

アイリス : あれは本物のロボになったってわけじゃ……

ソアラ : いやーやっぱり、カティアさんは才能溢れる方ですね。こうも簡単にロボになれるとは。

アイリス : いったい、なにをされたの?

ソアラ : 特別にあたしのためだけのマッドサイエンティスティな人体実験として……

ロボになれる薬をもらったんです!

キャトラ : はあ?そんなのあるわけないでしょ?

ソアラ : カティアさんは、それを飲んでもなんちゃら効果が期待できるだけと言ってましたが。これがまた効果てきめんなんです。

キャトラ : どんな効果なのよ、それ?

ソアラ : えーっと、たしか、プラ……プラ……プラスティック効果ってやつです!

キャトラ : なんなのよその体がペッコンペッコンになりそうなのは!

アイリス : ……もしかしてプラシーボ効果のこと?

ソアラ : あっ、それっす!プレパラート効果っす!

キャトラ : なにを顕微鏡で観察するつもりなのよ!

っていうか、プラシーボ効果ってアンタ……

ただの思い込みってことじゃない!

 : 5

ソアラ : よっしゃー!たまねぎ、レタス、にんじん!こーーーい!ガシャンガシャンガシャン!

お次は、ステーキ!アーンド、寿司、てんぷーら!カモーンヌ!ガシャンガシャンガシャン!

キャトラ : なにやってるのかしら、あれ。

アイリス : うーん……なんだろ。

ねえ、ソアラちゃん。なにしてるの?

ソアラ : あっ、お二人さん! どもども!それがっすね……

合体こそがロボのロマンらしいんですよ。

キャトラ : アンタ、それまだ言ってるの?

ソアラ : そのロマンを求めるにはちゃんとご飯を食べるのが大事らしいんです。

キャトラ : は……?

ソアラ : 取り入れた栄養たちが体の中で合体していくことでロボとしての進化に繋がると——

ぐごーーー!!!

キャトラ : え!? なんで急に寝るの?そんなタイミングあった?

アイリス : ちょっと大丈夫?ソアラちゃん!

カティア : やれやれ……様子がおかしいと思って見に来てみれば……

キャトラ : あら……カティア?

本当にもう……なにやってるんだか。

ソアラ : 返す言葉がないです……

アイリス : 強くなろうと思って、朝から晩まで特訓してたんだよね?

ソアラ : はい……最近はご飯を食べるのも忘れてました。

カティア : でも、空からいつ何が降って来るかわからないから夜中に寝ずの番もしてたと。

ソアラ : はい……寝てる間に、負け確とか嫌ですから。

キャトラ : それで、ずっと起きてられるようにロボにして欲しいってカティアに頼んだのね?

カティア : 私のところに来たときはそんな理由だなんてひと言も言ってなかったけどね。しつこくロボになりたいって言われただけ。

だから、ただの栄養剤をロボになれる薬として渡したの。プラシーボ効果くらいは期待できるんじゃない? ってね。

ソアラ : はい……めちゃくちゃ効きました。あの薬。

キャトラ : アンタ、素直だもんね……

ソアラ : でも、一日中起き続けてると日に日に辛くなっていくんです。

キャトラ : そんなの当たり前でしょ!

カティア : 疲れてる様子だったから、まずはちゃんとご飯を食べなさいって伝えたのよ。

納得させるために、ロボ的には合体だからどうとか言ってね。

でも、はっきり伝えておくわ。あなたはロボじゃない。ただの人間よ。

ソアラ : そうっすよね……わかってます。

カティア : なら、いいわ。私も<[AC0D0D]EMETH[FFFFFF]>の開発で忙しいから、あとはよろしく。

アイリス : はい、頑張ってください。

キャトラ : ホント、お騒がせ者なんだから。

ソアラ : 申し訳ないっす……

アイリス : 大丈夫だよ。ゆっくり休んでて。

ソアラ : ただ、こうでもしないとみんなを守り切れないって思ったんです。

アイリス : ソアラちゃん……

ソアラ : あたしは勇者として皆さんのルーンドライバーでいたくて……

でも、口で言ってるだけだと裸の勇者に成り下がって誰の心もピカッとできなくなっちゃうかもって……

アイリス : そっか……

ソアラ : こんなこと思いたくないっすけどあるんですかね、人間には。

限界っていうのが……

 : 6

アイリス : 人に限界があるかどうかは私にもわからない……

でも、人はそんなに弱くはないと思うよ。絶対に。

ソアラ : アイリスさん……

アイリス : この前の戦いだってみんながいたから私も気持ちを強く持てたし。

キャトラ : そうそう。私もアイリスと一緒よ。

ひとりじゃできないこともみんなでやればできたりするもの。

ソアラ : たしかに、なにをするにもパーティー編成が大事ってのはわかります。

てか、あたしもアイリスさんたちがいて安心しきってましたし。

アイリス : ふふっ、ありがとう。私もだよ、ソアラちゃん。

キャトラ : なんか、ここんとこロボがどーとか何故かひとりでどーにかしようとしてたみたいだけど。

いーじゃない、ひとを頼ったって。自分ができないことは誰かに任せればいいのよ。見張りだって交代すればいいし。

ソアラ : つまり、人は……誰かと手を取り合い一緒に強くなっていくもの……

ハッ……!これぞ、まさしく合体……!

キャトラ : ……かどうかは知らないけど足りないとこなんて補い合ってなんぼでしょ。

ソアラ : それはそうっすよね。あたしなんて、できないことの方が多いですから。

いやー、あたしとしたことがそんな基本のイの字も忘れてしまうとは。

キャトラ : 基本にイの字はないけどね!

ソアラ : ちょっと、らしくない感じ[醸:かも]し出してましたかね?

アイリス : そういう一面も私は好きだよ。

でも、これだけは忘れないでね。

ソアラちゃんの明るさにみんな救われてるってこと。

ソアラ : アイリスさん……

キャトラ : ま、そうね。アンタといると飽きないもの。

ソアラ : ウッ……ウッ……

ウッホホホーーー!!!なんだかテンションぶち上がって参りました!

アイリスさん! キャトラさん!あたしたちのパーティーをもっともーっと最強の布陣にしていきましょう!

アイリス : うん。そうだね。

キャトラ : アタシがいれば最強なんてちょちょいのちょいなんだから!

ソアラ : おおっ! 頼もしいっす!では、まずはどんな魔物が現れてもぶっ倒せる合体技が必要っすよね!

それなら……手始めに飛行島みたいなビームを撃つ練習でもしてみましょうか!

キャトラ : は?

ソアラ : あっ!ウッホビームからでもいいっすよ!みんなでやったら絶対楽しいし、団結力も高まるっす!

アイリス : い、いや、それは……

ソアラ : ほれほれー、ウッホウッホ♪

キャトラ : ちょ、ちょっと近付いてこないでよ。

ソアラ : ウッホウッホ♪

キャトラ : ウッ……ウッ……

こんなパーティー、方向性の違いでいますぐ解散よ!